Dr. Alex Paterson率いるThe Orbの1stアルバムが今年（2016年）はリリース25周年ということで、4月のRecord Store Dayに初めてアナログリイシューされた。しかもアビイ・ロード・スタジオにてハーフ・スピード・カッティングされた180g LP 4枚組という超弩級仕様。オリジナルはLP 2枚組だが、2時間近い作品のため各面に約30分の音溝が詰め込まれており、標準的なLPの片面収録時間（20分強）からすると音質的に不利な仕様であった。対してリイシューは受け皿の容量が2倍に拡張され、さらにはハーフ・スピードでカッティングされているのだから、オリジナルと比較して音質的には相当なアドバンテージがあることは間違いない（オリジナルマスターはDATなのでアナログマスターの作品のように経年劣化の心配もないはずだ）。そこで、今回はオリジナルとリイシューを比較しながらこの作品のアナログ盤について書いてみたい。
Original Double Album
(Big Life – BLRDLP 5/847963-1, 1991)
まずはリリース当時に買い求めたオリジナル盤。記憶が定かではないけれども、恐らくこの手のレコードを買っていたのは、今は無き渋谷Liverpool（愛すべき店主のおっさんと油圧式鈍行エレベーターでおなじみ）だったかもしれない。1991年といえば今なお名盤として語り継がれる作品が数多く発表された年だが、本作品もそんな年にリリースされた名盤中の1枚だと思う。Designers Republicの手によるデザインも魅力的である。手元にあるオリジナル盤のフィーチャーを挙げると以下のとおり：
- ジャケットはシングルスリーブ。(a)
- 2枚のレコードはそれぞれ異なるデザインのカスタムスリーブに収められている。(b)
- ジャケットに“special classical pressing”と記されたステッカーが貼られている。(c)
クラシック音楽のレコード専用の設備でプレスされたことを意味するらしいが、詳細は不明（ランオフのエッチングによればカットとプレスが行われたプラントは英Damont）。音質にこだわった盤であることをアピールしているようだ。 - 銀インクで印刷が施されたニス引きインナースリーブは高級感があり非常に美しい。
- Made in England
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| (a) | (b) | (c) |
Reissue Quadruple Album
(WAU! Mr. Modo Recordings/Island Records – 0600753592861, 2016)
オリジナルと対比するとリイシューのフィーチャーは以下のとおり：
- ジャケットはゲートフォールドスリーブ。オリジナルに比べトリミング範囲が狭くなっている（バターシー発電所の下側が結構切れている）。(d)
- 4枚のレコードはそれぞれ異なるデザインカスタムスリーブに収められている。1、2枚目はオリジナルのデザインを踏襲しているが、3、4枚目は独自のデザイン（あまりかっこよくない）があしらわれている。また、紙質は薄目で、印刷もスミ1色となっている。(e)
- シュリンク上にオーディオファイル仕様であることをアピールするステッカー。(f)
- ジャケット、インナー共に版下がオリジナルからのコピーで総じて印刷のクオリティが低い。また、フォントはオリジナルと似ているが微妙に異なるものが使われている。
オリジナルは既にDTPで制作されていたはずだと思うが、レイアウトデータなんて残っていないものなのだろうか？ - レーベルは白地にスミ1色印刷。A面レーベルの曲名に酷い誤植がある。(g)
名曲“little fluffy clouds”がどこでどう間違ったのか“fluffy white clouds”に（誤植と言うよりタイトル捏造）。また“earth (gaia)”のカッコ内が“(gala)”になっている（これはジャケット裏のクレジットも同様）。 - Made in Czech Republic （プレス、印刷はGZ Mediaあたりか？）
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| (d) | (e) | (f) |
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| (g) |
このようにコストダウンの影響と責任者出て来いレベルの杜撰な印刷管理に起因する残念な点が諸々見受けられ、ある程度予想はしていたけれども、やはりリイシューの宿命というべきかモノとしての魅力、満足度はオリジナルには遠く及ばないのであった・・・（もう少しがんばって欲しかったが）。
長くなったので音については次回につづく。
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